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スノーボードはスキーと並んで人気のウィンタースポーツです。 日本国内においては80年代から存在が広く知られるようになり、90年代に入ると人気が急上昇。 特に20代の若者からはそのファッショナブルなスタイルにも注目が集まり、ゲレンデはカラフルなウェアに身を包んだスノーボーダーたちで賑わうようになりました。 2017年現在、残念ながらスノーボード人口は減少傾向にありますが、老若男女を問わず長く楽しめる生涯スポーツとして再認識されており、その中軸を担っているのがアルペンスノーボードです。
冬季オリンピックで再注目される
スキーと同様に競技性の高いスノーボードは1998年の長野大会から冬季オリンピックの公式種目として採用され、アルペンでは男女別にデュアルスラローム(DU)とパラレル大回転(PGS)の2種目が行われています。 特に2014年のソチ大会で、スノーボード競技では日本人女性初となる銀メダル獲得で快挙を成し遂げた竹内智香選手の活躍が大変話題となり、アグレッシブに旗門を通過していくライダーの姿をはじめて見たという人も多いのではないでしょうか。

日本国内ではFIS国内選手権、JSBA全日本スノーボード選手権大会、SAJ全日本スキー選手権大会スノーボード競技、冬季国体など数多くの競技大会が開催されており、プロとアマのそれぞれで活躍の場があります。 またスピード競技とは一線を画すのがテクニカル選手権(通称テク選)で、ターンの正確性や滑走中の姿勢といったスノーボードの基礎技術を競う大会が一定の人気を保っています。

競技志向でなくても、全国各地のゲレンデでは数多くのスノーボーダーがフリーライディングを楽しんでおり、雪面に切れ味鋭いカービングの軌跡を残しています。
スピードと重力へのあくなき挑戦
アルペンとフリースタイルでは用品の素材、構造、特性が大きく異なります。 まずボードですが、見た目ではフリースタイルが幅広でノーズとテールに丸みがあり、アルペンは細めでテールに丸みがないのが主流です。 乗った感じはフリースタイルが柔らかめであるのに対し、アルペンは固くどっしりとした安定感があります。

次にブーツですが、フリースタイルはクッション性に優れたEVA素材で全体的にしなやか、ジャンプやトリックに欠かせない足首の自由度を確保しているのが特徴です。 アルペンはスキーブーツと同じプラスチック素材で、ハードバーンでスピードを出しても十分に耐えられる強度を持っており、ハードブーツとも呼ばれています。

最後にビンディング。 フリースタイルはボードに取り付けるベースプレートが硬化プラスチック、カーボン素材、アルミのいずれかで、かかとを支えるハイバックも硬化プラスチックまたはカーボン素材です。 つま先と足首はストラップの締め付けで固定し、ハイバックのローテーションやフォワードリングにより志向に合わせた調整が可能です。 アルペンはベースプレートがジュラルミンまたは硬化プラスチックで、つま先とかかとをしっかり固定します。 特徴的なのはリフトとカントの調整で、高さと角度を変えることにより、好みのポジションにセットアップできます。

このように使う用品の違いにより、アルペンとフリースタイルではライディングスタイルが分かれ、同じスノーボードでも別物として扱われるのです。
好奇心を刺激する高速カービング
アルペンの魅力はなんといってもスピードとカービングです。 エッジを立てながら雪面に深いトラックを刻んでいくスリリングな感覚はアルペンならではのもの。 リズミカルなショートターンからぐいぐいと攻め込むミドルターン、そしてハイスピードでコースを駆け抜けるロングターンまで、一口にターンといってもその形はさまざまです。

中級者レベルになると、体を雪面に擦りつけながら滑るユーロターン(ビッテリーリーターン)も簡単にできます。

ゲレンデでの暴走は危険ですが、経験を積んだ大人であればスピードをコントロールするという加減の面白さがあり、年を重ねてなおライディングに対する好奇心が衰えないのがアルペンの醍醐味といえます。

またボード、ビンディング、ブーツに加えてパーツを取り付けるなど多種多様なセットアップが可能であり、自分仕様にカスタマイズできるのも魅力のひとつ。 中高年のリターンライダーで活気を取り戻しつつあるオートバイにも似た楽しみがあるように思います。
レベルと体形に合わせてセットアップ
ボードは初心者であればフリーライディング向けのミディアムフレックスがおすすめです。 適度な柔らかさがあり、スピードに合わせて無理なくボードをコントロールできます。長さは身長から15~20cm引いたくらいがいいでしょう。

アルペンをはじめて間もない頃は短い方が乗りやすく、自分の意思に応じた細かい動きが可能です。 滑りに慣れてくれば長いボードにもチャレンジしてください。 ボードは長いほど安定感が増すため、アルペンらしいスピードを楽しめるようになります。 上級者になるとメタル搭載のより走破性の高いボードを好むようになりますが、思い通りに乗りこなすためにはそれなりの脚力と体力が求められます。 気ままにフリーライディングというより、競技志向の強いライダーにとって適したボードです。

ブーツはかかとが浮かず、指先に若干のゆとりがあり、足全体に窮屈感がないサイズを選びましょう。 初心者や女性は自由度があるソフトフレックスが最適です。上級者になるとボードに力を伝えやすい硬めのフレックスを好むようになります。

ビンディングは手で押し下げて固定するベールタイプ(トゥクロージャー)と脱着が楽なステップインの2タイプから選べます。 主にフリーライディングを好むライダーはステップイン、上級者や競技に出るようなライダーは多少面倒でも安定感に優れたベールタイプを選ぶのが一般的です。 さらに細かい調整はカントとリフトでセットアップしながら、理想のライディング実現へと近づけていきます。
ワンランク上の滑りを身につけるには?
まったくの初心者であればスノーボードスクールに入ることをおすすめします。 安全かつ楽しく滑るためには、滑走だけでなく知識を含めた基礎が大切です。 一人で滑っていても自分がどういう状態にあるかは見えません。 また独学では変なクセがつきやすく、あとで修正するのに苦労していまいます。 教えるプロであるインストラクターのレッスンを受けることで、必要な基礎が身に付き、安心してコースに出ることができます。

フリースタイルからの転向、初心者から中級車レベルではDVDでのイメージトレーニングが効果的です。 ある程度滑れる人なら、あとは思い描いたイメージに近づけるのみ。 たくさんの種類のDVDが出ていますが、一番いいのは自分がかっこいいと思ったライダーが出演している作品です。 繰り返し見ながら頭の中にイメージを置きつつ、コースで実践してみましょう。追い求める姿があれば上達の励みにもなります。

そしてすべての人に共通する上達の近道は自分より上手いライダーと一緒に滑ることです。 同じコースを滑っていても、レベルが違えばライン取りやターンのタイミングなどあらゆる違いを目にすることができます。 技術は盗みながら吸収していくものです。 上手いライダーのスピードについていくのは大変ですが、その先に答えがあると信じて貪欲に後を追いかけましょう。 コースの外では積極的にコミュニケーションを図り、欲しい情報を仕入れてください。
自信がついたらバッジテストで腕試し
滑りの上達を知る方法のひとつにバッジテストがあります。 バッジテストとは日本スノーボード協会(JSBA)が定める技術認定テストのことで、JSBA公認・認定のスノーボードスクールで受験できます。 5級から1級まであり、ボードコントロール、ターンの正確性、リズム、バランスなど総合的に滑走レベルを判定します。 どれくらいのレベルで滑れているのかを客観的に判断できるというメリットがあります。

主に初心者から中級者が対象となる5級~3級はJSBA非会員でも受験することができます。 ターン時のバランス、リズム、スピードコントロールなどが重視されます。 1級以外はどの級からでも受験できますが、実際には3級から受験する人が多く、ゲレンデで気持ちよく滑れるようになってきたら一度チャレンジしてみましょう。

上級者向きの2級~1級を受験する場合は事前にJSBA会員登録が必要で、1級のみ既に2級の認定書を持っていることが条件になります。 ロングターン、ショートターンの正確性のほか、中急斜面でのフリーラインディングといった全体の流れの中での積極的なボードコントロールが判定要素として加わります。 難易度は上がりますが、上級者の証として合格しておきたいところです。 なお1級に合格するとインストラクターの受験資格が得られます。

バッジテスト1級に合格したら、今度はインストラクター検定に挑戦してみましょう。 インストラクター検定はC級からはじまり、B級、A級とステップアップしていきます。 C級は技術テストがなく、講習とペーパーテストのみ。B級、A級の技術テストではターンの質が要求されます。 資格取得は狭き門ですが、インストラクター検定用の対策キャンプやレッスンプランもあるので、焦らずじっくり取り組めば合格の可能性が高くなります。

スノーボードスクールでインストラクターとして働く場合は最低限この資格が必要です。 またインストラクターになることを目的としなくても、合格に向けてチャレンジを続けている人はたくさんいます。